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かがくろん

科学論

戸坂 潤

「唯物論全書 第一巻」三笠書房、1935(昭和10)年10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 142,817 字 · 278 页

青空文庫

そしてこの場合の畢極の個体は、広義に於けるアトム(エレクトロン・ニュートロン・ポジトロン・等々)である。アトムとはもはや之を分割し得ないものの謂であった、なる程之が個体(不可分―― Individuum)の物理学的な意味だろう。だが生物は之とは別な意味に於て、個体の性質を持っている。生物の個体は物理的にはいくらでも分割出来る。細胞は更に原形質や核や染色体や細胞膜其の他に分割できる、等々。だがそれにも拘らず、之は生物学的に一個の不可分な個体、オルガニズムなのである。オルガニズムに於て不可分と考えられるものは、もはや単なる物質乃至物体ではなくて、高度に発達した物質の合成による生命なのだった。

生命の概念に就いては、機械論と生気論との対立が、或いは非全体説と全体説との対立が、有名であるが、この矛盾の克服は全く、生命現象に対する唯物弁証法の役割による以外に道を残さない。ここでも亦、神秘説と機械論とを止揚統一するものは自然弁証法なのである*。元来生命それ自身がディアレクティッシュなものなので、新陳代謝や疾病治療や、出生死亡等の現象が、常識的に之を告げている。