轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんのしゅっぱつ
秦の出発
豊島 与志雄
「文芸」1945(昭和20)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,532 字 · 29 页
私の宿ブロードウェー・マンションまではかなり遠く、自動車で送って貰った。
自動車のなかで私は、今見たばかりの夢のような生々しさで、丹永の顔を見ていたし、その香料を嗅いでいた。
そうした彼女の、精神的というよりも寧ろ神経的な存在が、時として霊界の言葉を伝えたのである。
或る時彼女は、友の母親の病気見舞に行き、友と二人で客間にいる時、ふとした沈黙のさなかに、天井を仰いで大声で言った。
「死臭あり、死臭あり。」
彼女ははっと我に返って、顔色を変えた。――いつも自分が無意識に発した言葉を意識しているのだ。――友も顔色を変えた。それから二人で手を執りあって泣いた。
一週間後に、友の母親は死んだ。
この種の例はいくらもある。――的中しなかった言葉は、解釈を誤ったのか、或は忘れられてしまったのであろう。
張浩が狙撃された時は、少しく異っていた。
その晩、夕食後、彼女はなんとなく淋しく、久しぶりに祈祷をした。居室の片隅に、亡き母の形見ともいえる古い小さな仏像が、真鍮と赤銅との少しの金具を鏤めた貧しい厨子に納めて、安置してある。その前に彼女は赤い小蝋燭をともし、跪坐して合掌した。