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ほどよいひと
程よい人
豊島 与志雄
「女性線」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,328 字 · 21 页
この話についても、私は程好いところを歩いたことになる。愛情の機縁などというものはなく、若い男女が普通互に憎からず思う程度の気持ちのうちに、彼女のアパートの室で、二人寝ころんでしまったのだ。特別に印象深い情景などは何もない。
彼女は体の大柄な方で、精神的にはいささか鈍いところがある。長めの顔立ちに、小さな眼と小さな鼻と小さな口とがぽつりぽつりと置かれた感じで、鼻筋はよく通り、そして耳朶の恰好がたいへん美しく整っている。私はその耳朶をいちばんよく愛したとも言える。彼女は一度結婚したことがあるのを誰にも隠さず、これから一人で自活するのだといっていた。全体としては質素な生活をしているが、砂糖とバターには金をおしまなかった。それから、顔の色艶に変化が激しく、皮膚が美しく冴えて澄んでることもあれば、醜く濁ってくすんでることもあるが、それとは別に、気分はたいてい明るかった。何かしら統一のとれない感じを私は受けた。そのことが却って私を惹きつけた所以かも知れない。
私たちは同僚の目を避けて、映画を見に行ったり、コーヒー店にはいったり、郊外散歩としゃれたり、彼女の室で酒を飲んだりした。