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いねのいちにち

稲の一日

中谷 宇吉郎

「世界」1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,013 字 · 20 页

青空文庫

しかも葉緑素自身はその反応の前後に変化はないので、丁度触媒と似た作用をつとめているにすぎない。

そういうふうに考えてみると、今日触媒化学が非常に進歩して、アンモニアの合成とか、硫酸の製造とかいうふうな、各種の大化学工業が、触媒の作用を利用して立派に大量生産をなしていることを思えば、葉緑素の触媒作用を、単に自然条件に依存する農業にだけ任せておかないで、これを工業とすることを考えても、そう不都合ではないであろう。そしてわれわれの人工米の研究が丁度それに当るのである。

今日まで葉緑素による澱粉の合成を、農業だけに任せておいた一番主な理由は、面積が沢山要るということに尽きるであろう。勢力の方ももちろん考える必要があるが、その方はいよいよやるとなれば、風力の利用というようなことによって解決の見込みは充分ある。それでまず面積の方を考えてみよう。

密植と親穂の重視と籾数の増加とによって、従来の天然水田における優秀成績たる一坪当り三升を五倍にすることは、少なくとも計算の上では、不可能でない。それに数値では現わし得ないが、適性な肥料を適時に与えることによって、それをさらに増すことも容易であろう。