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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん

空中漂流一週間

海野 十三

「名作」1939(昭和14)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页

青空文庫

「おう、気球がまた上りだしたぞ」

「あっ、ちがいない。おお六条。あの黒い雲を見ろ」

「思いきって、ここで瓦斯をぬいて海面へ下りようではないか」

「なにを。下りるのはいやだ。わしは泳げないんだからな」

「俺が助けてやろう」

「いやだといったらいやだ。このピストルが眼にはいらないのか」

キンチャコフはピストルをふりまわした。

「うーぬ、貴様。さっきからピストルをかまえて、それで俺を嚇かしつけているつもりなのか」

「なにを、来るか日本人。来てみろ、一発のもとに赤い花が胸から咲きでるだろう」

「莫迦野郎!」

といったのと、轟然たる銃声が耳許にひびいたのと、ほとんど同時だった。

「うーむ、やったな」

六条は、突然右胸部に焼火箸をつきこまれたような疼痛を感じた。胸に手をやってみると、掌にベットリ血だ。とたんに彼ははげしく噎せんだ。がっがっがっと、咽喉の奥から音をたてて飛びだしたのは、真赤な鮮血だった。

「畜生、やりやがったな」

「火の玉」少尉は重傷に屈せず、奮然と立ち上った。そしてキンチャコフがピストルを握り直そうとしたところを、すかさずとびこんで足蹴にした。ピストルが、ぽーんと上に跳ね上ったと思ったら、ゴンドラの外にとびだした。