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くうちゅうひょうりゅういっしゅうかん
空中漂流一週間
海野 十三
「名作」1939(昭和14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,324 字 · 35 页
はっはっはっ」
といって、愉快そうに笑った。
上昇延刻
その「火の玉」少尉は、その夜の九時、帝都北東地区の○○陣地において、繋留気球に乗りこんだ。そのころ意地わるく南よりの風がかなりはげしく吹きだして、地上に腹匍っているような恰好の気球はもくもくと揺れていた。
はじめは、この気球の下のゴンドラに、六名の者が乗りこむことになっていたが、いよいよという時になって、ただひとり「火の玉」少尉だけが乗ることとなった。
「一体どうしたのか。まさか怖じ気がついたのでもあるまいに」
と、彼は笑った。
「いや六条さん。班長さんはじめ幹部の連中が、いま手が放せなくなったのですよ。貴方もついでに、見合せなすったらどうですかね」
警防団の庶務係の老人がいった。
「私は予定どおり乗りますよ。風が吹いていようが、敵機は来ようと思えば来るんだからね」
「いえ、風――風がはげしいからどうのこうのというのではなくて、なんでもこの○○陣地の裏手の垣のところを、怪しい人物が二三人うろついていたという話ですよ。それで班長さんはじめ総がかりでいま見廻り中なんです。気味がわるいじゃありませんか」