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くうきおとこ
空気男
海野 十三
「モダン日本」1937(昭和12)年1月~8月、10月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,792 字 · 10 页
街路
瓦斯体となった清家博士は、街路樹の葉から葉へともつれながら、警戒をつづけていた。
このあたりにフワついているところのこれも瓦斯体となった博士夫人の身体と混合することを、極度に恐れていた。もし、万一そんなことになると、彼は再びもとの身体にはかえれないであろう。
この心配の折から、向うの通りからガランガランとやかましくベルをならしながら、撒水自動車がやってきた。
それは最新式のもので、大きな水槽の下から横むきに水を猛然と噴きだす式のものであった。
博士は街が涼しくなることを悦んでいた。撒水自動車が近づくと気流がはげしく起った。
博士はハッと身を縮めたが、撒水のはげしい勢いのために、ふきとばされそうになった。
「これはいけない」
と思っているうちに、ものすごい突風がやってきて梢にしがみついている博士の身体を軽々とふきとばした。
瓦斯体に化した清家博士の身体は、つぎつぎに起る突風のため、だんだん博士邸より遠くへ飛ばされてゆくのであった。
「弱ったなあ、これじゃ実験室へいつになったら帰れることやら――」
博士の心細さは、だんだんつのってくる。
突風は、さらに博士の身体をあおった。