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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

「なんだ、陸軍機か」

彼等は、噛んで吐き出すように、云った。この帝都の惨状を、振りかえっては、あまりにも無力だった帝都の空の護りへの落胆を、その飛行隊の機影に向って抛げつけたのだった。

だが、しかし、その偵察機の上にも、同じ悲憤に、唇を噛みしめる軍人たちが、強いて冷静を装って、方向舵を操っていた。

「おい、浅川曹長!」操縦士の耳へ、将校の太い声が、響いた。

「はい。何でありますか」曹長は、左手で、胸のところに釣ってある伝声管をとりあげると、やや湿っぽい声で返事をした。

「機首を左へ曲げ、隅田川に沿って、本所浅草の上空へやれ。高度は、もっと下げられぬか」そう云ったのは、警備司令部付の、塩原参謀だった。

「はいッ、では、もう二百メートル、下降いたしましょう」

浅川曹長は、左手を頭上に高くあげると、僚機の注目を促し、それから腕を左水平に倒すと、手首を二三度振った。途端に、彼の乗っている司令機は、下げ舵をとって、静かに機首を左へ廻したのだった。あとに随う二機も、グッと旋回を始めたらしく、プロペラが重苦しい呻り声をあげているのが、聞えた。

「これは、ますます、ひどいな」