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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
「高射砲で、下から射ったら、どう」
「駄目だ。ウンと高く飛んでいるから、中々届かない」
「じゃ、上から逆落しかなんかで、バラバラと撃っちまえば、いいじゃないの」
「そこにぬかりが、あるものか。あっちには、有力な戦闘機が飛行船の上に飛んでいて、近づく飛行機を射落してしまう」
「まア、くやしい。それじゃ、敵の飛行船をみすみす通してしまうことになるじゃありませんか」
「だから、東京市民は注意をしろ、とサ」
「オーさんは、いやに、米国空軍の肩を持つのネ。怪しいわ」
「おいおい、人聞きの悪いことを云うなよ。これでも、愛国者だよ」
「どうだか判りゃしない。あたし、明日になったら、お別れするわ」
「じょ冗談、云うな。折角、この機会に、世帯を持ったのじゃないか」
「世帯って、なにが世帯さア。こんな、焼トタンの急造バラックにさ。欠けた茶碗が二つに、半分割れた土釜が一つ、たったそれっきり、あんたも、あたしも、着たきりじゃないの」
「まだ有るぞ。ほらラジオ受信機」
「……」
「半焼けの米櫃、焼け米、そこらを掘ると、焼け卵子が出てくる筈だ。みんなこの際、立派な食料品だ」
「そりゃ、お別れしたくはないのよ、本当は。