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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
こっち、お前達にも、ひどい苦労を嘗めさせた。おれはいつも済まんと思っているよ」
「お父さん、愚痴なら、云わん方がいいですよ」浩が心配して口を挿んだ。
「いや、今日は愚痴ばかり並べるつもりじゃないのじゃ」老父は強く首を振って云った。「そんなわけで、わしは、海軍工廠をやめたが、お国のために尽そうという気持は、更に変らないのじゃ。変らないばかりじゃあ無い。先刻のように、折角大事の防空監視哨に立つ人が無いと聞くと、残念で仕方がないのじゃ。そこでわしは考えた。何とかして自分がお役に立つ方法はないものかと。わしは眼こそ見えないが、耳は人一倍に、よく聞こえる。盲目になってから、特によく聞こえるような気持がするのじゃ。だがいくら耳が聞こえるからといって、盲目ではお役に立たない。そこでわしは、相談をするのじゃが、殊に真弓に考えて貰いたいと思うのじゃが、わしは孫の三吉を連れて監視哨の物見台へ上ろうと思うのだよ」
「ああ、お父さん、そんなこと、いけないわ」
「なあに、わしのことは、心配いらぬよ。こんな身体でお役に立てば死んでも本望だ。ただ三吉を連れて行くのは、可哀想でもあるけれど、あれは案外平気で、行って呉れるだろうと思う」