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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
夜間の航行は、実に骨が折れた。艦長は、精密な時計と、水中聴音機とを睨みながら、或るときは全速力に走らせるかと思うと、また或るときは、急に推進機を全然停止させて、一時間も一時間半も、洋上や海底に、フラフラと漂っているというわけだった。
こんなわけで、横須賀軍港以来、二旬の日数が経った。
そして或る日のこと、艦長は乗組員一同を集めて、驚くべき訓令を発した。
「本艦は、本日を以て、米国加州沿岸に接近することができたのである」艦長の頬は生々と紅潮していた。「本艦の任務は、僚艦一〇二及び一〇三と同じく、米国の大西洋艦隊が太平洋に廻航して、祖国襲撃に移ろうというその直前に、出来るだけ多大の損害を与えんとするものである。其の目標は、主として十六隻の戦艦及び八隻の航空母艦である」
乗組員は、思わず「呀ッ」と声をあげかけて、やっとそれを呑みこんだ。
艦長の訓令で、いままでの不審な事実は、殆んど氷解した。航路が複雑だったのは、米国の西部海岸に備えつけられた水中聴音機や其の辺を游戈している監視船、さては太平洋航路を何喰わぬ顔で通っている堂々たる間諜船舶の眼と耳とを誤魔化すためだったのだ。