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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
「おお、これは――」
その家の窓下で、弦三は不思議な音楽を耳にした。
それは正しく、この家の中から、しているのだった。
雑音のガラガラいう、あまり明瞭でない音楽だったけれど、曲目は正しく、ショパンの「葬送行進曲」
嗚呼、葬送曲!
一体、誰が、いま時分「葬送行進曲」をやっているのだろう。
彼は痛手を忘れて、窓の枠につかまりながら、家の中を覗きこんだ。
おお、そこには蝋燭の灯影に照し出されて、一人の青年が倒れていた。その前には、小さいラジオ受信機が、ポツンと、座敷の真中に、抛り出されていた。
音楽は、紛れもなく、そのラジオ受信機から出ているのだった。
(JOAKが、葬送曲をやっているのだろうか、物好きな!)
弦三は、むかむかとして、脚の痛みも忘れ壊れた窓の中へ、もぐり込んだ。
入って来た人の気配に気付いたものか、死んでいると思った青年が、白い眼を、すこし開いた。
そして呻くように言った。
「君、あれを聞きましたか。アメリカの飛行機のり奴、飛行機の上から、あの曲を放送しているのですよ。無論、故意にJOAKと同じ波長でネ。しゃれた真似をするメリケン野郎……」