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くうしゅうそうそうきょく

空襲葬送曲

海野 十三

「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页

青空文庫

軍曹は、マスクの中で、できる限りの声を張りあげたのが、少尉の耳に、やっと入った。

「おう、吉奈軍曹。至急偵察を命ずる。放送局裏に、不可解の部隊が集結しているぞ。突入誰何しろ。友軍だったら、短銃を二発射て。怪しい奴だったら、三発うて。避難民だったら、四発だ。時節がら、怪しい奴かも知れぬから、臨機応変、細心に観察して、判ったら直ぐ知らせろッ」

軍曹は、わかったと見えて、首を上下に振った。

「では、行け」

軍曹は、右手に、短銃を握ると、放送局舎目懸けて、驀進した。

少尉は、直ちに、別の信号をして、兵員の急速集結を命じた。部署に最少限度の兵員を残して、あと二十名ばかりのものが集ってきた。彼等は、取敢えず、三門の機関銃を敷いた。

「少尉殿」耳の側で、伝令兵が叫んだ。

少尉は首を振って、応答した。

「警備司令部との連絡電話が切断したであります」

「なにッ」少尉は、駭いて、伝令兵の腕を握った。「無線電話はどうかッ」

「無線電話にも、司令部の応答が、無いであります」

「無線も駄目か。はあて――」

途端に、前方で、銃声が響いた。

「パ、パ、パン!」

うむ、さては、怪しい者だ。

三発の短銃の音に、堤をきられたように、向うの方に、銃声が起った。