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くうしゅうそうそうきょく
空襲葬送曲
海野 十三
「朝日」1932(昭和7)年5月~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 95,012 字 · 189 页
暴徒一味の煽動は、さまざまの好餌を、市民の中にひけらかし、善良な人達までが、羊の皮を被った狼に騙されて、襲撃団の中に参加したのは、物事が間違う頃合いにも程があると、後になって慨かれたところだった。
若い青年男女は、鮎のとも釣のようなわけで、深い意味もわからず、その団体に暴力を以て加盟させられた。一味幹事の統制ぶりは、実に美事であった。いろいろな別働隊が組織され、各隊は迅速に、行動に移った。
長造の妹娘の紅子と、末ッ子の素六とは同じような手で、参加を強いられた。
長造とお妻が、涙をもって止めたが、それは何の役にも立たなかった。馴染の誰々さんも入っている――たったそれだけのことで、若い人達の参加を決心させるに充分だった。「放送局を襲撃しろッ」
ハッキリと、加盟団の指令が出たときには若い人達は、やっと気がついた。だが、それは、もう遅かった。幹部の手には、物々しい武器が握られていた。反抗したが最後、その兇器が物を云うことは、いくら若い連中にもよく解った。
紅子と素六とは、恐怖と反省とに責められながら、放送室の一隅に、突立っていた。
放送局襲撃隊の指導者は、鬼川壮太といった。