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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

大分ヨボついているが、この後備軍人たちも相当なものだった。これから世界一を誇るS国空軍の強襲をうけようという場合にもかかわらず、平然と、いつものような冗談をいいあうほど、くそおちつきに落着いていた。

神崎分団長は、そこで肚をきめて、命令を発した。少年達を召集して、警護、警報、交通整理、避難所管理の各班に分属させること、救護班、防火班、防毒班、工作班は大人がやること……、これでやっと分団長の気は楽になった。

「オウ、分団長はいますかァ……」

と、自転車で駈けつけてきたのは、警報班長の髪床屋の清さんだった。

「分団長は、ここだここだ。清さん清さん」

声を聞きつけて、清さんは、青い顔を天幕のなかに入れた。

「あのゥ、これは大きな声でいえないことだけれど、実は、いま新宿駅のそばを通ってきたんですがね、駅のところは黒山の人なんで……」

「黒山の人? 喧嘩か、流言か」

「まァ流言の部類でしょうね。その群衆はてんでに荷物をもって、甲州方面へ避難しようというのです。なんでもいよいよ今夜あたり、帝都は空襲をうけて、震災以上の大火災と人死があるというのです。だから、帝都附近は危険だから、甲州の山の中に逃げこもうという……」