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くうしゅうけいほう

空襲警報

海野 十三

「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页

青空文庫

あれを本箱の中にしまっておいた。それを、今日は引ぱりだして、見ながら作っているんだよ。ハッハッハッ」

「まあ、その本をしまっておいてよかったわね、兄さん」

「さあ仕事はまだある。急いで急いで」

旗男は、さらに竹男と晴子とをうながして、前室にあてた八畳の部屋にある押入の中のものをドンドン外に出して、この押入に眼張をほどこした。

「兄さん、ここは、お手伝いさん用の防毒室なのかい」

「そうじゃないよ。お手伝いさんも皆と一緒だ。これは、万一、第一防毒室が壊れても逃げこめるように作ったんだ。つまり第二防毒室さ」

旗男は、これでもう大丈夫だと思った。それに防毒面が一つあるから誰か時々これをかぶって外に出て、ちょっと防毒面と頭の間に指で隙間をつくり、嗅いでみればよい。

窒息性のホスゲンは堆肥くさく、催涙性のクロル・ピクリンはツーンと胡椒くさく、糜爛性のイペリットは芥子くさいから、瓦斯のあるなしはすぐわかるのだ。

「お父さんも、お母さんも、もう安心ですよ。すっかり防毒室が出来ました」

両親は旗男たちの働きを、病床から涙をだして喜んだ。旗男の旅行で、遅れていた家庭の防護設備も、兄弟の協力でどこの家にも負けないくらい堅固に出来あがった。