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くうしゅうけいほう
空襲警報
海野 十三
「少年倶楽部」別冊付録、大日本雄弁会講談社、1936(昭和11)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,838 字 · 92 页
あと十分間の我慢だ!」
火災は幸いにして、日頃の訓練が物をいって大事に至らずにすんだ。
「……瓦斯だッ、瓦斯、瓦斯!」
坂上から、伝令の少年が自転車に乗って駈けくだってきた。
「ホスゲンだ、ホスゲンだ。……防毒面を忘れるな」
「毒瓦斯が流れだしたぞう……」
恐怖の的の毒瓦斯弾が、落ちたらしい。それっというので、防護団の諸員はお揃の防毒面をかぶった。警報班員は一人一人、石油缶を肩からつって、ガンガン叩いて駈けだす。
「瓦斯は坂の上の方から下りてくるぞ。防毒面のない人はグルッとまわって風上へ避けろ。なるべく高い所がいいぞ。そこを、右へ曲って池田山へ避難するんだ!」
旗男は後に踏みとどまって、坂上から徐々に押しよせてくる淡緑色の瓦斯を睨みながら、さかんに手をふった。彼は、勇敢にも時々防毒面と頭との間に指ですき間をつくり、瓦斯の臭をかぎわけようとつとめた。
地上の地獄
ウウウーと、物凄い唸声をあげて、真赤な消防自動車が、砲弾のように坂を駈け上っていった。麻布の方に、烈々たる火の手が見える。防毒面をつけた運転手は、防毒面の下で半泣になっていた。それは爆弾がこわいわけではなかった。