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まどのしたをとおったおとこ
窓の下を通った男
小川 未明
「赤い鳥」1926(大正15)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,485 字 · 10 页
二
そして、いやな顔もせずに、
「さあ、あげますよ。」といって、銭を男の手に渡したのでした。
乞食の男は、それをいただいて、
「ありがとうぞんじます。」と、いくたびも礼をいって立ち去りました。
風の吹く、さびしい村の方へ男は帰っていきました。たとえ、わずかばかりのお金であっても、空腹をしのぐことができたのであります。
この広い世の中に、だれ一人、自分のために思ってくれるもののないのに、こうして心から同情してもらうということは、頼りない男に、どれほど、明るい気持ちを与えたかしれません。男は、毎日、この家の窓の下を通るときに、この家の人々の身の上に幸福あれかしと祈らないことはなかったのです。
二
こうして、長い月日が過ぎました。ある日、男はいつものように村から、道を歩いてきますと、いつになく、その家の窓の雨戸が堅くしまっていました。どうしたことだろうと思いました。それから、子細に周囲をしらべてみますと、その家は、空き家になっていました。
あのやさしい、しんせつな、女の家の人たちは、どこへか越していったと思われました。
「どこへお越しになったのだろう……。」と、男は思った。