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まどのしたをとおったおとこ

窓の下を通った男

小川 未明

「赤い鳥」1926(大正15)年7月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,485 字 · 10 页

青空文庫

」と、女の人はいいました。

男は、だまって、うなだれて女の人のいうことを聞いていました。

女の人は、いくらか銭を哀れな男に与えました。男は、しわだらけな、色つやのよくない手をのばしてそれを受け取って、いただきました。その銭は、たとえすこしではありましたけれど、深いなさけがこもっていましたので、男には、たいへんにありがたかったのです。

男は、いくたびもお礼を述べて、そこを立ち去りました。そのうしろ姿を女の人は、気の毒そうに見送っていました。

その後、男は、町へいくたびに、この家の窓の下を通ったのでした。けれど、たびたびあわれみを乞うては悪い気がしました。よくよく困ったときででもなければ、願うまいと決心したのであります。

しかし、その長い間には、雨の降る日もあれば、また風の吹く日もありました。そして、一日町の中を歩いても、すこしも、もらわないような日もあったのであります。

彼はしかたなく、この家の窓の下に立って、

「どうぞお願いいたします。」と、上を仰いで、いわなければならなかった。

すると、障子が開いて、眼鏡をかけた、色の白い、髪のちぢれた女の人が、顔を出しました。