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りっしゅんのたまご
立春の卵
中谷 宇吉郎
「世界」1947(昭和22)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,450 字 · 17 页
それに重心がどうとかするとか、流動性がどうとか、安定云々とかいうのが、どれもはっきりしていないことである。例えば流動性があれば何故倒れないかをはっきり説明してない点が困るのである。
一番厄介な点は、「みなさん、今年はもう駄目だが、来年の立春にお試しになってはいかが」という点である。しかしそういう言葉に怖けてはいけないので、立春と関係があるか否かを決めるのが先決問題なのである。それで今日にでもすぐ試してみることが大切な点である。
実はこの問題の解決は極めて簡単である。結論をいえば、卵というものは立つものなのである。朝めしの時にあの新聞を読んで、余り不思議だったので「おい、卵があるかい」ときいてみた。幸い一つだけあるという話で、早速それをもって来させて、食卓の上に立ててみた。巧く重心をとると立ちそうになるが、なかなか立たない。五分ばかりやってみたが、余り脚の強くない食卓の上では、どうも無理のようである。それに登校前の気ぜわしい時にやるべき実験ではなさそうなので、途中で放り出して、学校へ出かけてしまった。
この日曜日、幸いひまだったので、先日の卵をきいてみると、まだ大事にしまってあるという。