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りゅうたんだん

竜潭譚

泉 鏡花

「文芸倶楽部」1896(明治29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,899 字 · 30 页

青空文庫

またほほえみたまいて、

「お前あれは斑猫といって大変な毒虫なの。もう可いね、まるでかわったようにうつくしくなった、あれでは姉様が見違えるのも無理はないのだもの。」

われもさあらむと思わざりしにもあらざりき。いまはたしかにそれよと疑わずなりて、のたまうままに頷きつ。あたりのめずらしければ起きむとする夜着の肩、ながく柔かにおさえたまえり。

「じっとしておいで、あんばいがわるいのだから、落着いて、ね、気をしずめるのだよ、可いかい。」

われはさからわで、ただ眼をもて答えぬ。

「どれ。」といいて立ったる折、のしのしと道芝を踏む音して、つづれをまとうたる老夫の、顔の色いと赤きが縁近う入り来つ。

「はい、これはお児さまがござらっせえたの、可愛いお児じゃ、お前様も嬉しかろ。ははは、どりゃ、またいつものを頂きましょか。」

腰をななめにうつむきて、ひったりとかの筧に顔をあて、口をおしつけてごっごっごっとたてつづけにのみたるが、ふッといきを吹きて空を仰ぎぬ。

「やれやれ甘いことかな。はい、参ります。」

と踵を返すを、此方より呼びたまいぬ。

「じいや、御苦労だが。また来ておくれ、この児を返さねばならぬから。