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かさおりはんくろう

笠折半九郎

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社 、1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,004 字 · 26 页

青空文庫

彼は改めて恩賞のことを思いだした。どうして自分だけになんの沙汰もなかったのか、もし小次郎との喧嘩が悪いなら、小次郎にも同じ咎めはある筈だ。しかし小次郎はみんなと同様に恩典にあずかっている。

――こいつは考える値打があるぞ。

彼は続いて、小次郎が自分より先に、喧嘩の始末を言上したという話を思いだした。

畔田は思慮の深いやつだ。

そう云った頼宣の言葉も耳に残っている。思慮が深いということは、彼のように馬鹿正直でないという意味にもなる、彼の生一本な気持では為し得ない多くのことを為し得るという意味にならないか? ……彼はなんの隠しもなく喧嘩の始末を申し述べた、しかし思慮の深い小次郎が果して同様の言上をしただろうか。

「そうだ、火事の朝もそれだ」

半九郎は思わず声をあげて呟いた。

「もしあの火事がなかったら、あいつ果して鼠ヶ島へ来たろうか、……否! 来はせぬ、あいつは己の剣を知っている、来るとしても仲裁人か、そう見せて助太刀を連れて来たに違いない。火事はあいつに取って一石二鳥だった、果合いを免れたうえに、馬鹿正直な己をまんまと泣かした、くそっ!」

半九郎は拳で力任せに膝を叩いた。