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かさおりはんくろう
笠折半九郎
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社 、1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,004 字 · 26 页
「宜いか小次郎、己はこれまで世間の評判や噂話などは軽蔑して来た、そんなものは人を毒するだけで、三文の値打もないと思って来た、ところがそうじゃなかった、三文の値打もないどころか、そいつは人の運命を左右することも出来るんだ、大切なのは人間じゃない、言葉だ、噂だ、蔭口やこそこそ評判だ、腹黒い奴がひと捻り捻るだけで、事実には関係なしに言葉が人間の運を決定するんだ。宜いか、……是だけのことを前提として、あの五人に詫びると云うなら、己は詫びる」
半九郎はもういちど白く笑って続けた。
「だが小次郎、そのまえに己は云うことがある、今度の紛争の原因は、己が恩賞のお沙汰に漏れたことにあるんだ、そしてその原因の前にもう一つ本当の原因がある、……そいつを先ず解決しなくてはならん」
「それはどういう意味だ」
「鼠ヶ島の果合いだ、あれが己から恩賞のお沙汰を奪った、十七人の組下までがそのために恩賞から漏れた」
「笠折、それは正気で云うことか」
小次郎の眼にも忿が表われた。
「拙者も世間の噂はうすうす聞いていた、拙者がお上に、喧嘩のことで貴公を讒訴したという、馬鹿げた話で取るにも足らぬと捨てて置いたが、貴公それを信ずるというのか」