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かさおりはんくろう

笠折半九郎

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社 、1941(昭和16)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,004 字 · 26 页

青空文庫

「五人に詫びろと云うまえに、貴様はそれを考える必要があったんだ、取るにも足らぬこそこそ話が、人の運を決定するんだ、己は今こそ悪意を認める、己が五人に詫びるまえに貴様は鼠ヶ島の借を返さなくてはならんぞ」

「心得た、如何にも鼠ヶ島へ行こう」

小次郎はそう云いながら立った。

「今度は拙者から時刻を定める、明日の朝六時、必ず待っているぞ」

半九郎は荒々しく去って行く小次郎の姿を、嘲笑の眼で見送った。……それから更に彼が、客間で待っている五人に、こう云っている声を聞いた。

「笠折とは拙者が果合いをすることに定めました。各々は手をお引き下さい、拙者には前からの行懸りがあるのです、笠折のことは拙者にお任せ下さい」

決意のある声だった、それに対して五人の方でもなにか主張したが、結局は小次郎に任せると決ったらしい。……半九郎はそれを聞きながら、

「誰か居らぬか、酒が無いぞ」

と大声に叫びたてた。

この争いには自然でないものが多い。つまらぬ感情のささくれや、行違いや、思過しや、いろいろな要素が偶然にひとところへ落合い、それが誤った方向へ押流されている。……半九郎にしても小次郎にしてもそれが分らない訳ではなかった。