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そまつなはなたば

粗末な花束

宮本 百合子

「新小説」1924(大正13)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,227 字 · 13 页

青空文庫

今まで、愉快で、漠然とした暖さに伸び拡っていた感情が、俄にきゅっと私の胸の中で搾り縮められるような何かが、彼女の体のこなし、売りもの総てにつきまとっていたのだ。

私は何故か、彼女が自分の商売品である画報に一向自信を持っていないのを感じた。彼女自身、それが非常に美しいものでも、興味を唆るものでないのもはっきり知っている。然し、自分は買って欲しい。いらないのは判っているのだが、という苦しげな、臆病なものを冊子を差し出す腕の動作に語っている。

その時、私は一人の職人が鷲掴みにして腹がけの丼から反古包みの銭を出し、憤ったような顔つきで冊子の一つを買ったのを見た。もう一人、これはやっと十六ばかりのやや田舎ッぽい小間使い風の娘が、思いがけず、恐らく彼女の目から見ると奇麗な西洋人に勧められ、人中ではあり断り切れず真赤になり、まごついて画報と引かえに金を払うのを見た。買う方も、売る方も極り悪く、辛そうに見えた。僅か一二分の交渉であるのに、売りてと買いてを、人がたかってさも事件のように取巻いた。

私は、その人だかりの外を廻って車道を越した。その時から、一つ場所に漂っている背高い婦人帽の頂を認めると、私は、鋪道を彼方側に越すことにした。