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ぜつえんたい
絶縁体
豊島 与志雄
「世界」1952(昭和27)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,752 字 · 38 页
それきり言葉が途切れた。いつぞや、市木さんが猫の死骸を庭の隅に埋めたことを、私は思い起した。市木さんが冗談を言ってるのだとは思えなかった。
市木さんは長火鉢の銅壺で酒の燗をし、その銚子を次々に三人の前へ並べた。もう酌をしてくれなかったから、私たちは手酌で飲んだ。肴としては、すずめ焼と蒲鉾と海苔が出ていた。
長い沈黙の後に、土居さんはふと気付いたらしく、食卓の上を見渡して話題を変えた。今後のことについてである。
弘子はまだ女学校の生徒だったとはいえ、女のことだから、家事の手伝いなどにはだいぶ役立った筈だ。それが亡くなったからには、今後のことも考えなければなるまい。市木さんはもう再婚は無理だとしても、女中でもおいたらどうだろうか。そういうことを土居さんは言った。自分たちがついているのに、近所の人たちの手前もあるし……ということを強調した。
市木さんの返事は、ただ、一切構わないで貰いたいという一事に尽きた。
土居さんはまた憤慨しかけた。
「構わないでくれと、あなたはいつも仰言るが、それでは世間に通用しませんよ。弘子さんの葬式にしたって、ずいぶん、御近所の方々の世話におなりなすったでしょう。