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ぞくだらくろん

続堕落論

坂口 安吾

「文学季刊 第二号(冬季号)」1946(昭和21)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,653 字 · 15 页

青空文庫

これが彼の世界聯邦論の根柢で、日本人だの米国人だの中国人だのと区別するのは尚原始的思想の残りに憑かれてのことであり、世界人となり、万民国籍の区別など失うのが正しいという論である。一応傾聴すべき論であり、日本人の血などと称して後生大事にまもるべき血などある筈がない、と放言するあたり、いささか鬼気を感ぜしむる凄味があるのだが、私の記憶に誤りがなければ彼の夫人はイギリス人の筈であり、日本人の女房があり、日本人の娘があると、却々こうは言いきれない。

だが、私は敢て咢堂に問う。咢堂曰く、原始人は部落と部落で対立し、少し進んで藩と藩で対立し、国と国とで対立し、所詮対立は文化の低いせいだというが、果して然りや。咢堂は人間という大事なことを忘れているのだ。

対立感情は文化の低いせいだというが、国と国との対立がなくなっても、人間同志、一人と一人の対立は永遠になくならぬ。むしろ、文化の進むにつれて、この対立は激しくなるばかりなのである。

原始人の生活に於ては、家庭というものは確立しておらず、多夫多妻野合であり、嫉妬もすくなく、個の対立というものは極めて稀薄だ。文化の進むにつれて家庭の姿は明確となり、個の対立は激化し、尖鋭化する一方なのである。