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しばられたあひる

縛られたあひる

小川 未明

「児童文学」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,532 字 · 9 页

青空文庫

しかし、それは、ますます彼の体を窮地に陥れるものだということに気づかなかったのです。

穴の中から、頭を出して、いっさいを知りつくしたのねずみは、あひるが、不格好なようすで、あわてるのを見て、はじめはにくらしい奴だ、いいきみだというくらいに思ったのが、だんだん気の毒になりました。それには、前にこんなことがあったから――いつかこの流れへ下りた白鳥が、旅のおもしろい話をきかしてやるからと、たくさんの魚たちを集めておいて、ふいに、かわいらしい小ぶなを三びきも食べて、どこかへ逃げていってしまったことを知っていたからです。けれど、この愚かなあひるには、そんな芸当は、どう見てもできそうはありませんでした。それどころか、自分でぐるぐると繩をなにかの枝に巻きつけて、苦しまぎれに、ウエー、ウエーと悲鳴を上げているのでした。ちょうどその声は、ぶなの木がざわざわと体を揺すって歌うのに、調子を合わせて、頓狂な拍子でも取るようにきかれたのでした。

りこうなのねずみは、この風のうちに、いつもにない不安を感じたのです。昼間、もうだいぶ青々と伸びた麦圃を通っている時分にも、ただならぬ風のけはいを予知したのであるが、日が暮れてから、いっそうその不安は濃くなってきたのでした。