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わなにかかったひと

罠に掛った人

甲賀 三郎

「探偵」駿南社、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,112 字 · 21 页

青空文庫

部屋の中ほどの床板の上に、燃えさしの短い蝋燭が立っているではないか。彼が先刻この部屋を出かけた時には、最後の蝋燭が燃え切ったので、現にその痕が一たらしの蝋の上に、真似ばかりの尖の焦げた芯がついたまま、別に床板に残っている。して見ると、この燃えさしの蝋燭は、彼が出てから誰かが持って来たものだ。無論それは伸子に違いないのだ。

では、妻は一度帰って来たのだ。そうして、彼の姿が早えないので、又どこかへ出かけたものと見える。一体どこへ出かけたのだろうか。出かけたにしても、行く当もない彼女はもう帰って来そうなものだ。彼は一層不安になり出した。

彼は外に出て妻を探そうかと思った。然し、当がないのであるから行違いになる恐れがある。彼はどうする事も出来ない不安に、気をいら立たせながら、四辺を見廻した。

と、部屋の隅に手紙らしいものが置かれてあるのが、初めて眼についた。彼はドキンとしながら、飛びつくようにしてそれを手に取った。

それは確かに伸子の置手紙だった。

友木はあわてて読み下したが、彼の顔色は忽ちサッと蒼くなった。手紙には次のような事が書かれていたのだった。