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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

山本周五郎『美少女一番乗り』。同一底本的分册已合并为一书。收入:美少女一番乗り、和蘭人形、蒲生鶴千代、歔欷く仁王像、戦国会津唄、半化け又平、身代り金之助。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 页

青空文庫

四

その様子があまりに恐ろしかったのであろう、慶太郎はあわててあとしざりをしながら、

「藤七郎、行こう」

というと、家来をつれて逃げるように川上の方へ立去った。――お奈々は美しい唇を裂けるほど噛んでいたが、くるっと金之助の方へ向直って、声をふるわしながら叫んだ。

「どうしてあやまったの、金之助さん、悪いのはあなたじゃなくて若様じゃないの、相手が御主人の子だからどんな無理なことでもあやまるの。打たれても黙っているの?――もしそうならあなたは卑怯者だわ!」

「卑怯じゃない、卑怯者じゃない!」

金之助はぐっと額をあげていった。

「男はこんなことで怒りはしないんだ。こんなつまらぬことで槇屋金之助は怒りはしないぞ、お奈々ちゃん。――そして今にきっとおまえにもわかる時が来るよ」

四

その夜――。

もう夜中をずっと過ぎたころ、母の寝息をうかがいながら金之助は旅立ちの支度を急いでいた。着替えを包んで、父の形見の刀を取出して、糒を袋につめればそれでいいのだ。それがすむと今度は机に向かって手紙を二通書いた。一通は母へ、そして別の一通はお奈々に当てて、

――母を頼む。

とくれぐれも念を押して書終わると、机の上にきちんとそろえて置いて、金之助は母の寝間の方へ向かってすわり直し、