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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

山本周五郎『美少女一番乗り』。同一底本的分册已合并为一书。收入:美少女一番乗り、和蘭人形、蒲生鶴千代、歔欷く仁王像、戦国会津唄、半化け又平、身代り金之助。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 页

青空文庫

次の間まで来ると、道玄は首を傾げながら言った。

「ひどく頭を打った模様で、すっかり脳を傷めております。命に関わるような事はないが、耳も駄目だし舌も動きません。悪くするとこのまま白痴になるかも知れぬ」

「え? 白痴に――」

「ほかの傷と違って頭の中の事ゆえ、こればかりは薬の力でどうするというわけにもゆかず、出来るだけ手は尽くしてみますが」

お通は茫然と立竦んでしまった。

あの綺麗な顔つき、利口な、優しい清吉が耳も聞こえず口も利けぬ白痴になるなんて、夢にも考えられない事だ。……思えばあの時自分がだしぬけに大きな声で叫んだのが悪かった。清吉はあの声に驚いて後ろへ墜ちたのだ、もし本当にこのまま白痴になってしまうとしたら、

――あたしのせいだわ、みんなあたしの。

お通が病間へ戻って来ると、清吉はぽっかりと眼を明いていた。

「清吉、清吉、あたしがわかる?」

お通は枕元に坐って、顔を重ねるようにしながら呼んだ。側に看護していた乳母のお梶も、じっと覗き込むようにしたが、清吉の眸はまるで虚ろに空を見るばかりだった。

「わからないの清吉、あたしの顔が見えないの、この声が聞こえないの、清吉」