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びしょうじょいちばんのり

美少女一番乗り

山本 周五郎

山本周五郎『美少女一番乗り』。同一底本的分册已合并为一书。收入:美少女一番乗り、和蘭人形、蒲生鶴千代、歔欷く仁王像、戦国会津唄、半化け又平、身代り金之助。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,583 字 · 149 页

青空文庫

四

六郎右衛門の怒った声音、震えていた菊枝、屈辱に蒼ざめていた市之丞の顔――それが消すことの出来ない幻のように、小房の眼からいつまでも離れなかった。

その事があってから三日めの黄昏ごろであった、……父の顔を見るのが厭さに、食事も居間へ運ばせていた小房が、庭へ下りて秋草に水を打っていると、――広縁を踏んで客間へ入って行く市之丞の姿をみつけた。

「あ、……市さま」

小房は恟っと胸の躍るのを感じた。

四

「ああ市之丞か、よく来たな」

左内は客間へ入りながら、愛想よく言って市之丞の前へ坐った。

「武芸出精という噂で、儂も陰ながら悦んでいるぞ。久しく戦いもなかったが、どうやら西の方の雲行きが怪しくなって来た。近いうちにひと荒れ……」

「お言葉中ですが、そのようなお話はまたの折に伺いましょう」

市之丞はずばりと左内を遮った。

「今日は父が拝借の金子をお返しに参りました。五百金と承知仕りましたが、それに相違ござりませぬか」

「五百金には相違ないが、どうしてまた」

「いざ、――お改め下さい」

相手の言葉を押切って、持参の金包みをずしりとそこへ差出した。――左内は金包みと市之丞の顔とを見比べていたが、