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せいにょにんぞう
聖女人像
豊島 与志雄
「群像」1947(昭和22)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,549 字 · 28 页
この西岡の夫人が、私にしばしば結婚をすすめて、候補者という令嬢の写真を幾枚も見せた。私が笑って取り合わなくても、彼女は写真を置いてゆく。私はそれを一日だけ預って、翌日には返すことにしている。写真など、どうせ実物より良いか悪いかどちらかだ。私はろくに見もしない。
――もしも、清子の写真があったら、朝となく夜となく、私は眺め暮すだろう。机上に飾っておくだろう。彼女の写真は実物そっくりに違いない。つまり、実物とは違った写真が出来ないような、そういう彼女なのだ。
一日おいて写真を返すと、西岡夫人は感心したように言う。
「これもいけませんか。そうですかねえ。」
そしてまた暫くすると別な写真だ。――世の中には、結婚可能な男もずいぶんいるが、結婚可能な女は更に多いらしい。然し西岡夫人はそんなことは言わない。脂肪の多い頬に窮屈そうな笑みを浮べて、眼だけが真面目に私を直視する。
「あなたも早く結婚なさらないと、しまいにはしそこなってしまいますよ。わたしの知ってるかたで、あれこれと選り好みばかりなさった揚句、とうとう、女中さんと結婚なさったのがありますよ。」
「ところが、私のところには、婆やきりいませんよ。