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せいかぞく

聖家族

小山 清

「文芸 第十一巻第三号」河出書房、1954(昭和29)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,523 字 · 12 页

青空文庫

この世の中に生れてきてこの子はまず馬槽に寝たんだよ。おれはこの子を腕のいい大工にしようと思っている。」

若者はヨセフの話を聞いて感動した。人がこの世の中に生れてくるのにはいろんな仕方があるものだと思った。それから、自分の身の上のことを思った。自分がみなし児で寄辺のない身の上であることを。エルサレムへ行ったら、きっと堅気な職に就こうと若者は思った。

「親方さん。坊やをおれに一寸抱かさせてくれないか。」

若者はイエスを膝に載せた。イエスは若者の顔を凝っと見つめた。後年、悩める者や重荷を負う者のうえに注がれたその眼差で。

夜中に、若者はふと目が覚めた。灯火の消えた暗い部屋の中に、ひととこ明りが見える。目を凝らして見ると、寝床の中のイエスの寝姿が、闇の中に幻のように浮き出しているのである。若者ははじめその光がどこから差しているのかわからなかったが、すぐにそれがイエスの頭上にある毫光の照明であることに気づいて驚いた。それは云うならば、レムブラントが描いたゆりかごの中に眠るイエスの画に見られるような効果を現出していた。イエスはすやすやと寝息を立てて眠っている。