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かんぞうせんせい
肝臓先生
「文学界 第四巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,194 字 · 46 页
「アイ・ドント・ノオ!」
「アレレ。コレ、肝臓デワ、アリマセンカ」
「余は胃や腸や心臓を見て、これを造った。余の見た書物に肝臓の絵がなかったのである」
「フウム。ききしにまさる天才であるよ。ヤキトリ屋の置物かな。看板にしては入口をふさいでしまうし、庭の石かな。しかし、ヤキトリ屋というものは小ヂンマリとしたもので、なんしろ目の前で焼いて食わせる店だから、庭はないはずだがな」
「シッ!」
彼は私を制した。まさしく彼はキチガイである。端坐して、と云いたいところだが、椅子にかけているから、キチンと両膝をそろえて、シンミリ私を見つめたと思うと、うつむいて、ポタリと一としずく。驚いたの、なんの。
「わが友よ」
彼は涙をふりはらって、おごそかに石の肝臓を指した。
「これなる肝臓はわが畏友、わが師、医学士赤城風雨先生の記念碑である。われら同志よりつどい、先生の高徳をケンショウしてそぞろ歩きの人々に楚々たる微風を薫ぜんため、これを目立たぬ街角へ放置せんとするものである。汝が詩を書かねばならぬのは、この肝臓の碑面であるよ」
私は涙腺がシッカリしているから、とてもキチガイにウマを合わせることができない。