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のうめんのひみつ

能面の秘密

坂口 安吾

「小説新潮 第九巻第三号」1955(昭和30)年2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,440 字 · 35 页

青空文庫

ぼくはその前からちょッと怒っていましてね。それというのが奥さんがぼくに半年以上も交渉させて何度か現地まで人を案内しているのにその実費以外にお礼にくれたのがなんと五万円ですよ。思ったよりも売値がわるかったので怒った気持は分らぬこともありませんがこのデフレ時代でしょう。そういうわけで腹をたてていましたからぼくは大川さんと同行はしませんでした。人が借金を返してもらうのに同行してもはじまりませんからね。そういうわけで、あの奥さんの流儀で借金とりもゆすりというなら、これもゆすりかも知れませんが、大川さんは人をゆするような人ではないのです」

彼の証言は意外なものであった。

「他に誰かゆすっていたような様子はありませんでしたか」

「そうですね。株ですった金だけでも何億でしょうから一千万ぐらいは右から左へどうにかなってもハタから分りゃしませんね。ゆすられるような秘密は他人には知ることができないからゆすりの種にもなるわけで、そういう私生活の方面のことは見当がつきませんね」

「息子の浩之介という人はどれぐらいの資金をもらったのですか」

「ちょッとした山林ですよ。時期がよかったからすぐ二三千万の金になったようですが、高利貸しをはじめてからはたちまちダメになる一方でしたね」