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のうめんのひみつ
能面の秘密
「小説新潮 第九巻第三号」1955(昭和30)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,440 字 · 35 页
「乃田家の財産は現在どのぐらいあるのですか」
「今ではスッカラカンですよ。今度売れた千八百万のほかにはその半分も値のなさそうなのが一ツ二ツで、あとはあの家屋敷だけです。むしろ骨董品にいくらかあるかも知れませんが、実はめぼしい物はもう大方売ってしまったようです。その方にはぼくらはタッチしませんから知りません」
今井の言葉はまるで犯人が乃田家の者だときめてるような口ぶりであった。あげくには、
「大川さんの奥さんがいま熱海におられるというお話でしたから、大川さんの熱海旅行の目的等についてきいてごらんなさい」
そこで大川夫人にききただしてみると、この旅行は株券を買うためではなくて借金を返してもらう目的であったということがハッキリした。
「家屋敷の抵当があることですから借金返済を催促したようなこともなかったのですが、また、むしろそんなわけですから百万円だけうけとるわけがないように思えましてね。奇妙なことだと思っておりましたのです」
「御主人は今井さんとずッと懇意にしておられたのですか」
「今ではお勤め先もちがっておりますし年齢のひらきもありますので、乃田さま以外のことではあまり交渉もなかったようです」