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のうめんのひみつ
能面の秘密
「小説新潮 第九巻第三号」1955(昭和30)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,440 字 · 35 页
今井については本社で東京を洗っていて依然アリバイは不明確だが、熱海でその時刻前後に彼を見たという積極的なものがでてこないからどうすることもできないのだ。焼跡からは彼の遺留品もでてこなかったが、とにかく当夜大川が大金をうけとっていることを知っていたのは今井だ。ところが乃田家の金庫を調べてみると現金が、二百五十万ほどと、鉱山を売買した翌日の預金が五百万、焼けたのを合わせて八百五十万ほどだ。九百万のうちこれだけ残っているのだから、今井の犯行にしては奇妙である。むしろ大川の借金取り立てが不成立に終ったと見なければならぬ。
すると窓の外から戸をたたいてゆすっていたのは大川当人であったかも知れない。その場合に犯人は奥さんであり、あるいは浩之介共犯説も考えられるわけだ。
するとある日、浩之介に使われていた夜学生の小僧が辻を訪ねてきて、
「辻さん。ぼくは薄気味わるくってあのウチを逃げだしたんですがね。ぼくの話が役に立ったら就職世話してくれますか」
「新聞社というわけにはいかないかも知れないが、役に立つ話なら今の何倍もいい会社なり商店へ世話するぜ。どんな話だ」
「ゆうべのことなんですよ。