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じゆうとしんぽ

自由と進歩

中谷 宇吉郎

「心」平凡社、1957(昭和32)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,610 字 · 19 页

青空文庫

しかし旅行嫌いでかつ現在のところに安住している人にとっては、その方がかえって自由であるというであろう。義理でいやいやながら、郷里の冠婚葬祭に出席しなくてもよいからである。ソ連では、革命後四十年経った今日でも、まだ国内を自由に旅行することは、許されていないそうである。しかし旅行などしたくない人にとっては、何もそれは自由の制限にはならない。

こういう場合の自由は、「心の自由」であって、この方は、法律や規則の埓外にあるものである。個人のこころの問題で、はたからあれこれいうべき筋合のものではない。といっても、些細な問題という意味ではなく、建設だの進歩だのと騒いでも、結局は、この「心の自由」に落着くことであろう。いわば高次の問題なのである。

社会とか、国家とかいうものを背景に置いて論議をする場合の自由は、「法律で規定された自由」に制限すべきである。信仰の自由、職業選択の自由、居住の自由、旅行の自由、言論の自由など、これ等は法律で護られた自由であって、前に言った「心の自由」とは、別のものである。この両者を混同すると、話がこんがらかってくる。

英語のフリーダムとリバティとが、丁度巧くこの分類に合うかどうかも知らないし、また訳があたっているか否かもわからないが、話をはっきりさせるために、前者をフリーダムとし、後者をリバティ