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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
「それ」
と、唇の色をなくして倒れているはる子の方を顎で掬った。××○○会社には、一脚百何十円とかする鞣皮張の安楽椅子が二十脚も並んだ重役会議室があった。が、設備のある医務室というものはなかった。
二人の小使にぐったりとだかれてエレベータアの方へ行くはる子のわきについて歩きながら、しづ子が後毛を頬にこぼして、
「小母さん、すみませんがよく見てやって下さいね、ほんとに私心配だわ」
と云った。
「ああよござんすヨ」
沖本がその連中について形式だけの応急室につかわれている室の方へ降りて行かず、スッと庶務の方へ曲る後姿を見ると、ミサ子はムラムラとした。
五時になるのを待ちかねてミサ子はこんどは柳を誘い、二階の端れにある応急室へ行って見た。
ドアをあけると室の中はもうガラン堂だ。はる子がいたときあげたのだろう。茶色のブラインドが一枚だけ巻き上っているところからだけうす明がさして、むこう側のビルディングの窓が往来をへだてて見えている。毛ピンが一本床に落ちていた。ミサ子はそれを見ると淋しい気がした。
「大丈夫だったのかしら」
「……さア……」
洗面所掛の小母さんにきいたら、気がつくと沖本が来て、