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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

「どうだね、そろそろもう帰れるだろう」

と云ったので、はる子はまだふらつくが守衛に自動車をよんで貰って独りでかえったということだ。

「どこなのかしら家って」

「代々幡だわ」

「――自動車代、会社で出すのかしら」

柳は、

「出すものか!」

と云ったぎり黙り込んだ。

八

二三日経った。けれども、はる子は出勤して来ない。

やがてはる子を知っている××○○会社の女事務員の間に、はる子さん大分悪いらしい話だわという噂がひろまった。

洗面所の鏡に向って髪を直しながら、

「はる子さんの、その肺リンパって、肺病なのかしら」

と、瘠ぎすの依田とよ子が云った。わきで、ザア、ザア水を出して手を洗っていた柳が、

「肺病って――結核じゃないのヨ。でもあたし達の職業病だわ。邦文タイプを永くやってると、力を入れる工合でみんなそうなるのよ」

「たまんないわねエ」

はる子は××○○会社の女事務員の中では古株で六七年勤めみんなから信用されていたのだ。

「はる子さんぐらいになったら、病気手当ぐらい貰えたっていいわね」

「そんなもん、会社が出すもんですか」

依田とよ子がいつもになくプリプリした口調でミサ子に云った。