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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
帯までしめ直すと、みどりがやや気の鎮まった調子で、
「何か用だったの?」
ときいた。
「あなたもしかしたらこの次の左翼劇場見に行くかしらと思って――私のところに割引で切符を買うついでがあるから訊きに来たんです」
「まあ――ありがとう。それでわざわざよってくれたの?」
「近いもん」
「そりゃそうだけれど――私、うれしいわ。是非仲間へ入れて下さい! お金わたしておきましょうか?」
「切符とひきかえでいいわ」
「……じゃ、私ハンド・バッグとって来なけりゃ……ここいらで待ってて下さいな」
「――大丈夫なの?」
「平気さ」
ミサ子が洗面所の前に立って待っている。みどりは堂本兄弟商会という字が廊下のこっちから見える程ひろくドアを開けっぱなしたまま、事務室内へ姿を消した。
十五
その二十日ほど前から、日本中の新聞が満蒙事変を喧しく報道して、号外の鈴の音がミサ子たちの働いている××○○会社の窓越しにまで聞えた。奉天を占領したとか、独立守備隊がどこそこへ進軍したとかいう記事が一号活字で新聞に出ても、××○○会社の若い平社員たちは一般に冷淡で、疑わしそうにジロジロひろげた新聞を読みながら、