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ぶま

舞馬

牧 逸馬

「新青年」1927(昭和2)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,843 字 · 16 页

青空文庫

お八重は突っ立った。そして、

「おかみさん、何をするんだね」

と茂助があわてているうちに、すうっと手を上げて電燈を消してしまった。

くらい茶の間の縁側のまえまで来て、足音が訊いた。かすれている峰吉の声だった。

「お! 暗えな」と、それから「誰もいねえのかよそこに」

「はい」障子のなかからお八重が答えた。「お帰んなさい」

「おお、お八重か。もすは?」

「あのね――」

「うん」

「電気をね――」

「うん」

「――直して貰ってんの」

「電気が消えたのか」

「ええ。故障なの。だからね、もすさんに直してもらってたの。もう点くわ」

「そうか――もす!」

「へ。今つきます。もうすぐ」

仕方なしにしばらく電燈をがちゃがちゃやったのち、茂助は頃あいを見てスウィッチを捻った。暗いあいだに、お八重がそこらの酒や小皿を片づけた。これでよしと見て、

「つきました――お帰り――」

茂助が障子をあけると、庭には松の枝に月がさすきりで、誰もいなかった。

3

その晩、それから間もなくだった。娘のいる近所の湯屋が火事になって、二、三軒にひろがって朝まで燃えつづけた。

「はい、点きました――お帰り――」