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ぶま

舞馬

牧 逸馬

「新青年」1927(昭和2)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,843 字 · 16 页

青空文庫

「ねえ、おとっつぁん」お八重がいう。「もすさんの死んだ時どうだったのさ」

これは何度となくお八重が発した質問である。「なに、何うだったといったところで」峰吉ははじめて口をひらいた。「おりゃあ見ていたわけじゃねえから――」

「うそ、うそ、うそ! そりゃあうそだ」

「――?」

「それ御らん。あんた、何も言えないじゃないか」

「それが、だからよ、おりゃあ見てたわけじゃなし――」

「お湯屋のおとめちゃんが死んでお気の毒さま」

「何を言ってるんだ」

「けどねえ、おとめちゃんともすさんとは惚れあってた仲なんですからね」

「だからよ。心中だろうってみんなも言ってるじゃねえか。止せ。面白くもねえ」

「そらね、二人が心中したというと直ぐ怒る」

「てめえこそもすのこととなると嫌にしつこいじゃねえか。そのわけをあとで聞くからな、返答を考えとけ」

「わけも何もあるもんか。一つお釜のご飯を食べてた人が死んだんだから――それに、心中でもないものを心中だなんて!」

「こら! 口惜しいかよ、お八重」

「くやしかないさ。口惜しかないけど――おとっつぁんもあんまりじゃないか。死人に口なしだと思って――」

「だからよ、誰も心中だとは言い切ってやしねえ。