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ふねでついたまち

船でついた町

小川 未明

「国民新聞」1930(昭和5)年1月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,924 字 · 6 页

青空文庫

またそんな理由もないのだ……。」

こう、金持ちは考えると、いっそ、みんなを断ってしまったがいいと思いましたから、翌日から、門の扉を堅く閉めたので、だれも中へはいれませんでした。

こうなると、いままで、救ってもらったものが、まったく食べられなくなって、餓死したものもあります。世間では、急に、金持ちの冷淡を責めました。新聞は、金持ちに、なんで、困ったものを見捨てたかと書きました。

金持ちは、とうとういたたまれなくなって、どこか、人々から目のとどかないところへいって、考えようと思ったのです。

彼は、にぎやかな都会から、こっそりと逃げ出して、船に乗りました。そして、できるだけ遠方へゆこうとしました。船の中で、

「や、こんなばかげた話はありません。私が、まちがっていましたろうか?」と、金持ちは、ものわかりのしそうな人に話しました。

「ほんとうに困っているのか、どうか、お見分けがつきませんでしたか……。」と、別の人が、口をいれました。

「はじめて顔を見たものに、どうしてそれがわかりましょう?」と、金持ちは、目をまるくしました。

「いや、ごもっともの話です。おそらく、みんなが困っているからでしょう。