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はなふぶき

花ふぶき

豊島 与志雄

「風雪」1948(昭和23)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,409 字 · 20 页

青空文庫

嘉代さんはちょっと気取りやで、向う意気が強いくせに、その大きなお臀のような善良さを底に持っている。表面は女房が亭主を尻に敷いてるようで、陰では亭主が女房を操っているのだ。

だが、どうも、赤木は今、嘉代さんを操りかねているらしい。なにかそわそわしていた。嘉代さんの方でも、赤木を尻に敷きかねているらしい。――これもなにかそわそわしていた。おれだって、御多分にもれない。宿酔の気味もあったが、釜の下の火がよく燃えなかった。

「千代ちゃん、千代ちゃーん、どこにいるの。」

嘉代さんの大きな叫び声が響き渡った。

飯さえできればあとはどうでもよいと思って、家の中の落着かない雰囲気をよいことに、おれはちょっと迎い酒をやっていた。

「千代ちゃんは知りませんか。」と嘉代さんはのしかかるように尋ねる。

おれは今朝から、いや、昨夜外に出た時から、もう千代の姿を見なかった。――聞けば、病院に、とにかく診察を受けに行くために、着替えをさしたが、それきり、彼女は消えて無くなったというのだ。

赤木は冷静に首をひねって、家中をあちこち覗き見て、それから、外を見廻ってくるとて出て行った。