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はなこのちんじゅつ

花子の陳述

豊島 与志雄

「別冊文芸春秋」1952(昭和27)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,726 字 · 22 页

青空文庫

けれどそのようなことは、わたくしにはよく分りませんし、また、とやかく言える筋合でもございません。

良吉さん御自身がそうですから、わたくしたちも諦めまして、口出しすることを差し控え、もう暫く様子を見ることに致しました。

美津子さんはますますひっそりと、そして憂鬱そうに日を暮して、外出することも少なくなりました。

そのうちに、母が風邪の心地で、五日ばかりうち伏しました。すると美津子さんは、朝と夕方、必ず寝室にやって来まして、母の顔色を窺い、容態を尋ね、体温を聞きました。もし体温を計っていないと、すぐに計らせました。それからまた細々と、わたくしに注意を与えました。どうも親切すぎて、干渉がましいとさえ思われました。それからまた幾度も、医者にかかるよう勧めました。御自分のことは棚にあげて、こちらはちょっとした風邪なのに、しつっこいほど医者を勧めました。

それでも、美津子さんが母の枕元に坐りこむのはやはり五分間ばかりの程度で、言いたいことを言い聞きたいことを聞いてしまうと、すっと立って行きました。

母の風邪が癒りますと、美津子さんは不思議なほど喜びました。ほんとによかったとか、お目出度うとか、何度も繰り返しました。