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はなよい
花宵
山本 周五郎
「少女の友」1942(昭和17)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,938 字 · 18 页
それは家計をきりつめるためであった。父の森脇六郎兵衛は掛川藩(今の静岡県掛川市)のお徒士番がしらで二百五十石ほどの食禄であったが、父が亡くなると共に食禄が半分になった。長男清之助が十五歳になると家督を相続することができる。そうすれば元どおり二百五十石全部貰えるのだが、相続するまでは半分だけしかさがらないのが定まりだった。そして清之助が十五歳になるまであと二年あった。そのあいだ家計をよほどきりつめなければならないので、下女と下僕は一人ずつ残してみんな暇をだしてしまった。――清之助がお城へあがれるようになるまでは、みんなできるだけ辛抱して倹約をしましょう。
母はそう云って、稽古がよいの供をやめさせたのである。それはよくわかっていた、けれどそれ以来英三郎は自分の道具や弁当のほかに兄の分まで持たされることになった。
――弟が兄の物を持ってあるくのはあたりまえだ。清之助はいばってそう云うし、母もそれが当然のことのように云った。はじめからそうしていたのならべつだけれど、いままで下僕の役だったのを自分がするのだと思うとこれまた英三郎にとっては悲しく辛いことの一つだった。