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はなよい
花宵
山本 周五郎
「少女の友」1942(昭和17)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,938 字 · 18 页
いつもの稽古肌着に短袴をつけた英三郎は、鉢巻をきっと締めると、云われるままに桜の木の下へすすんでいった。清之助はにやっと笑った。「よしその元気だ、遠慮はいらないから思うぞんぶん打ち込んで来い、いいか」
「……いざ」英三郎は木剣をとって身構えをした。
ひっそりとした朝の空気を縫って、どこか裏のほうで鶏の鳴く声がした。空はしだいに明るくなり、頭上の雲があかね色に染まりだした。……頭の上へたかく木剣をふりかぶった兄の姿を、じっと睨みつけていた英三郎は、やがて「えい」と叫びながら地面を蹴立てて打ち込んだ。
おうと答えて清之助は右へよけた。英三郎はすさまじい姿でそれを追った。木剣と木剣とが打ち合ってはげしい音をたてて、ふたりの位置は右へ左へと変った。
「その調子だ、元気で来い」清之助は弟の木剣を巧みにそらしながら自由にとびまわった。英三郎は逆上してしまった。自分の腕の立たないのも口惜しく、まるでこっちをからかっているような兄の態度はさらに口惜しかった、それで遂には法も型もなくめちゃくちゃに打ってかかった。
「おっと危い、そらこっちだ、しっかりしっかり」
清之助は面白がって縦横に弟をひきまわしていたが、やがて木剣をとり直すと、