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よしとししゃせいちょう
芳年写生帖
野村 胡堂
「オール読物」1938(昭和13)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,626 字 · 26 页
「まァ、何んと言う曲った根性だろう。地獄の鬼だって、そんな虐たらしい事ばかり追い廻しちゃ居まい――それほど芸とやらが大事なら、美事私も成敗しておくれ。お察しの通り欽さんは私の命まで打込んだ深間さ。それがどうしたんだい、畜生。さア、殺しておくれ、立派にやっておくれよ」
半狂乱のおよつは、芳年に身体を摺り寄せて、四方構わずわめき散らすのでした。
「馬鹿ッ、宜い加減にしないか。俺はそんなことで、人を殺す量見などは微塵も無い。気に入らなきゃ出て行くが宜い。どうせお前が勝手に飛込んで来た家じゃないか、死のうと生きようと、お前の好きなように――」
芳年もツイ持て余し気味に、およつの絡み付く身体をおし退けました。
「私一人で死ねと言うんだね、――ようし、あの人を訴人したお前の前で、見事死んで見せよう、驚くな」
いきなり台所へ駆け込んだおよつ、芳年がそれを追う隙もありません。キャッと言う悲鳴、――研ぎすました出刃庖丁で、我とわが喉も胸も、顔までも掻き切って、満身鮮血を浴びたまま、よろぼいよろぼい這い出して来たのです。
「あッ、何んと言うことをするんだ」
「さァ、この、私の顔をよく見ておくれ。